日本古典文学史論(上代)[22B0508]

科目名
Course Title
日本古典文学史論(上代)[22B0508]
History of Ancient Japanese Literature
授業言語
Language
Japanese
科目区分・科目種 日本語・日本文学コース クラス 日本語・日本文学コース
CCBM キャリアデザイン  
単位数 2.0単位 履修年次 12

担当教員 土佐 秀里
学期 前期
曜日・時限・教室
金曜 7 8 共通講義棟2号館102室

受講条件・その他注意
なし

授業の形態
講義,対面授業のみ

教科書・参考文献
教科書:『年表資料 上代文学史』(笠間書院) 教科書は毎回使用するので、必ず授業に持参すること。
参考文献:『上代文学研究事典』(おうふう) 『上代説話事典』(雄山閣) 『万葉ことば事典』(大和書房) 『時代別国語大辞典 上代篇』(三省堂) 『国史大辞典』(吉川弘文館)
 新編日本古典文学全集『古事記』『日本書紀』『風土記』『万葉集』(小学館)
 事前・事後学修には、これらの辞典類・注釈書を大学図書館で利用する。
 また、高校時代に使用した国語便覧・文学史・日本史資料集・古語辞典・古典文法書などがあれば、それらもなお有用であるので、適宜使用するとよい。

ALH区分
ALHとして実施

評価方法・評価割合
授業への参加態度=50% 毎回、リアクションペーパーを書いてもらう。授業を聞いて、考えたことを書く。授業内容の理解度とともに、着眼やひらめき、連想の豊かさや独創性を評価する。,ALH(アクティブ・ラーニング・アワー)=50% 2回のALH時にレポートを書いてもらう。評価基準は、授業内容をふまえながらも、視点に独自性があることを評価する。

主題と目標
 「上代文学」とは、八世紀を中心とする文学のことであり、日本史の時代区分では飛鳥・奈良時代の文学ということになる。この時代は、日本文学史の「最初」に位置づけられる。だが、「最初」とはどういうことか。それ以前は何もなかったのか。まず問題としなければならないのは、いつから「日本文学史」が始まるのかということである。そしてそこから始まったのだとすれば、その「始まり」を可能にした条件とは何であったのかということが次なる問題となる。そして「上代文学」は、政治史の区分である「飛鳥・奈良時代」に重なっており、「平安時代」の文学である「中古文学」と区分されているわけだが、その「区分」がなぜ政治史と同期しなければならないのかが第三の問題となる。それはつまり「政治と文学」の関係という問題でもある。
 結論から先に言ってしまえば、古事記・日本書紀・風土記・万葉集・懐風藻といった「上代文学」の作品=書物群は、律令国家体制に要請されて出現したものである。この授業の主題は、「文学史」とは何か(そしてそれを学ぶことに何の意味があるのか)を問い、それを「上代文学」を例にして考えるというものである。「文学史」とは「覚える」べきものなどではない。それは「考える」べきものである。従ってこの授業は「文学史論」でなくてはならない。なぜその作品が、その時代に出現し、その時代に受け入れられ、評価されたのか。その歴史的必然性を考えることが「文学史」である。
 文学史というと、作者や作品の「名前」だけを「覚える」イメージがあるかもしれないが、読んだこともない作品の名前だけ知っていても意味がないし、面白くもない。それゆえこの授業では、できるだけ作品そのものに触れてもらうつもりでいる。そして、作品の本文に書かれていることは、しばしば作品の「イメージ」を裏切る。できればこの落差を体験してもらいたいと思っているし、そこにこそ「読む」ことと「考える」ことの能動性があると思っている。テキストは見てもらえばわかるように、年表と作品ダイジェストしか載っていない。この情報から何が読み取れるかを考えてもらうというのが、授業の目的である。
 受講者が到達すべき目標は、次の通りである。
@古典文学の存在理由を理解できるようになる。
A日本古代の歴史を通して、ことばや文化についての認識を深め、それを人間の感情と関わらせながら理解できるようになる。
B図式的な理解を排し、可塑的な歴史の捉え方ができるようになる。
 特に国語科教員免許取得を目指す者にとっては、基本的な知識の習得だけではなく、文学作品とその歴史的背景に対して、紙の上の「情報」としてではなく、自分なりに「立体的」なイメージを獲得してもらいたいと願っている。

授業計画
第1回
文学史とは何か。「歴史」とは何か。「上代文学」の範囲と特質。
テキストの目次や年表を参照する。プリントも配布予定。
第2回
「上代文学」の前と後。文字の問題と律令制。都城と暦。
テキストの年表や巻末資料を参照する。プリントも配布予定。
第3回
古事記の成立。古事記序文と古語拾遺序文。音声と文字の葛藤。
テキスト:248頁、149頁(以下、テキストの頁数は最初の頁だけを示すので、次の区切れまで続くものとして了解されたい)。プリントも配布予定。
第4回
古事記の神話と日本書紀の神話。天地創世神話を中心に。
テキスト:87頁。プリントも配布予定。
第5回
古事記の神話と風土記の神話。オホナムチ(大国主)神話を中心に。
テキスト:90頁、145頁。
第6回
古事記と日本書紀の差異。ヤマトタケル伝説を中心に。
テキスト:98頁。プリントも配布予定。
第7回
風土記と万葉集の伝説。浦島子伝説を中心に。
テキスト:209頁。プリントも配布予定。
第8回
ALH(第一回):神話・伝説の構造と現代の神話。
課題:近現代の小説・漫画・映画・ドラマ・アニメなどの中から、古事記・日本書紀の神話や伝説と共通する要素や構造を指摘する。またそれが読者・享受者にどのような効果を及ぼすのかを考える。
第9回
白村江以後の政治と文学。近江遷都と万葉集。額田王三輪山歌と人麻呂近江荒都歌。戦争と遷都と文学。
テキスト:162、165、175頁。137頁。
第10回
額田王の宮廷歌。春秋競憐歌と蒲生野遊猟歌。宮廷女官の表現戦略。
テキスト:165頁。
第11回
壬申の乱以後の文学。高市皇子挽歌の合戦描写の現実性と神話化作用。
テキスト:181頁。150頁。
第12回
大津皇子謀反事件と文学。万葉集と懐風藻の大津皇子。
テキスト:151頁、170、172頁。プリントも配布予定。
第13回
現人神から聖天子へ。草壁皇子の死と軽皇子の天子受命。人麻呂による「神話」の創造。
テキスト:176頁、179頁。
第14回
律令と儒教。大宝律令制定と遣唐使再開。平城京遷都と記紀の成立。
テキスト:152頁。202頁。
第15回
ALH(第二回):万葉集を読む。持統天皇の歌を例として。
課題:テキスト169頁の「春過ぎて」の歌について、どう読めばよいのか、考えてみる。山に「衣を干す」というのはどういう状態か。またなぜそれが夏の到来を意味するのか。

時間外学習
 事前学修としては、シラバスに示され、授業で予告されたテキストの該当箇所に目を通し、おぼろげでよいので、だいたいの雰囲気や方向性を把握しておく。
 事後学修としては、テキストとノートを見返し、わからなかった言葉や気になった事柄について、図書館を利用して調べる。また紹介された作品や研究文献について、可能な限り現物を確認し、参照する。
その他、授業を受講して、自身の日本史についての知識が不足していると感じられた場合は、可能な範囲で自学自習につとめる。学び方・調べ方がわからない場合や、調べてもわからなかった場合は、教員に質問し問題の解決につとめる。

学生へのメッセージ
 わからないことや、不可解なこと(たとえば教員が間違った説明をしているなど)があれば、授業中または授業後に質問をしてもらいたい。また、その場で回答を得なくてもよい場合や、自分の意見を述べたい場合は、毎回のリアクションペーパーに記入してもらえばよい。必要に応じて、授業を通じて回答する。
 講義科目は、ただ話を聞くだけでは退屈なものである。しかし、自分が「考えながら」聞くと、頭が活性化する。素朴な疑問を蔑ろにせず、授業を「疑いながら」受講してもらいたい。これは、本を読むときも同じである。辞書や研究書に書いてあることや、教師の言うことが「正しい」とは限らない。むしろ「学問」とは、通説や常識を疑い、問うことからはじまるものである。素朴な疑問こそ大切にしてもらいたい。
 文学史というと、「覚える」ものだと思うかもしれないが、この授業では暗記は必要ない。具体的に作品を読んでその特色を知ることが授業の主たる内容であり、それをもとにして「自分で考える」ことが授業の目的である。そのつもりで参加していただければありがたい。
 リアクションペーパーやレポートも、要求されているのは授業内容のまとめではなく、授業内容をもとにして「自分で考えたこと」を書くことである。そのとき、自分の考えが「間違っているかもしれない」と不安になるかもしれないが、それはあたりまえのことであり、「間違っている可能性があること」を言ってみるのが学問というものなのである。私も平気で間違ったことやウソを言うから、耳をすまして、ちゃんと(心の中で)ツッコミを入れながら聞いてもらいたい。
 なお、授業形態がオンラインに変更された場合、シラバスの内容、配布資料の予定、課題内容などが随時変更される可能性がある。できるだけ変更を事前に伝えるようにしたいが、急な変更になる場合もありうるので、その点を了承しておいていただきたい。

学生の問い合わせ先
 開講時に連絡先(アドレス)を伝える。
 履修に関すること(出欠・単位・試験など)は、大学事務の担当部署に連絡・相談し、授業内容に関する質問や相談は、授業終了後に直接聞くか、メールで問い合わせること。