イタリアを基軸に、古代ギリシャ・ローマから現代にいたるまでのヨーロッパにおける法と市民社会の歴史を考察する。2021年度新規開設の、日本で唯一の科目。 今年度は、イタリア法史における「名誉の事由」という問題を中心的に扱う。嬰児殺や捨子などの行為(犯罪)について、それが女性親族の名誉を守るためという動機に基づきおこなわれたという事情が認められれば刑を減免する、という規定が「名誉の事由」である。このトピックスの歴史と現状、比較法史、名誉の事由にかかわる実際の刑事裁判事例の精査、人類学的な意義の検討、刑罰理論上の含意などについて議論する。 その延長線上で、昨年度に引き続き、ベッカリーア『犯罪と刑罰』(1764)を日本語訳で読み解いていきながら、古代から現代にいたるヨーロッパ刑事法史の問題を検討する。とくに名誉の事由との関係で家族や性についてベッカリーアがどのような議論を展開しているか、また刑事司法過程における「自白」の問題にも焦点を当てる。 特段の前提知識は求めないが、人間と社会の根本問題を深く考える知性が必要。
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