文化情報工学総論[24A0451]

科目名
Course Title
文化情報工学総論[24A0451]
Introduction to Humanities Data Engineering
授業言語
Language
Japanese
科目区分・科目種 情報 クラス 全学科
コンピテンシー ◎批判的思考力,◎創造的思考力
カラーコード
単位数 2.0単位 履修年次 24

担当教員 伊藤 さとみ
宮澤 仁
遠藤 みどり
埋忠 美沙
Le Hieu Hanh
土山 玄
吉田 裕亮
伊藤 貴之
土田 修平
佐藤 有理
学期 前期
曜日・時限・教室
火曜 3 4 生活科学部本館306室

受講条件・その他注意
2023年度以前入学生が受講できる共創工学部文化情報工学科の先行開講科目です。
2024年度入学生は 24R3001 文化情報工学総論 で履修登録してください。

授業の形態
講義

教科書・参考文献
各教員の配布資料、紹介する書籍

ALH区分
ALH(自発的な学習時間枠)※を実施する

アクティブラーニングの技法
ミニッツペーパー(リアクションペーパー)

評価方法・評価割合
小論文(レポート)=30%,授業への参加態度=50%(リアクションペーパー、発言など),ALH(自発的な学習時間枠)=20%

主題と目標
文化情報工学は、人文学にデータサイエンスを接合した人文情報学(digital humanities)に、工学知が協働する新しい工学です。工学は、人間の生活を豊かにする「新たなもの」を人工的に作り出してきましたが、「未知のもの」をつくるという点では、芸術や文学(アート)と同じです。従来の工学が自然科学を基盤としていたのに対し、文化情報工学は、人文学を基盤に、古今東西の「一つしかないもの」を尊重し、情報技術を用いてその価値の理解と再創造を行い、社会に発信します。本科目では、文化情報工学の入門の講義として人文学とデータサイエンス、工学知が協働する新しい学問分野の目指すところや方法、研究例について学びます。

授業計画
第1回
導入(宮澤仁)
19世紀の産業革命、20世紀の大衆文化、そして21世紀の情報革命へと人類社会が変貌を遂げてきた中で、工学は新しい様式と新しい対象が必要になってきた。文化情報工学は、人文学とデータサイエンスの接合から生まれた人文情報学に工学知が協働する新しい工学である。文化情報工学が求められるようになった背景からその特徴や目指すところについて講義を通じて理解し、次回以降の内容に対する関心を高める。
第2回
人文情報学−人文学とデータサイエンスの接合−(土山玄)
人文情報学は、人文学の課題にデータサイエンスを用いて新しい視点や知識を得ることを目指す分野である。また、デジタルアーカイブは、人文情報学の分析対象となる資史料をデジタル化し集成したものであり、成果公開の有力な方法でもある。人文情報学の基礎知識について学ぶとともに、工学との接点について考える。
第3回
文学とデータサイエンス(土山玄)
文学作品のテキストデータを対象とした計量的な研究の歴史とその方法について学習するとともに、実際に研究に使用することができるオープンソースのツールについて知識を得る。日本における文学作品を対象とした計量分析において重要な研究テーマの一つである作者や執筆時期が不詳の古典文学作品を対象とした分析を紹介するので、具体例を通じてその着眼点や分析の手順について理解する。
第4回
語学とデータサイエンス(伊藤さとみ)
言葉とイントネーションの関わりを具体例を通して理解する。日本語、英語、中国語などで、イントネーションの違いが意味の違いを反映している例を、Praatというソフトウェアで可視化し、検証する。とりあげる構文は、平叙文と疑問文の違い、英語の選択疑問文のイントネーション、中国語の多義性のある副詞の判別イントネーションである。合わせて、各言語の音声・韻律特徴の違いも観察する。
第5回
哲学とAIの協働:思想情報学、計算哲学(佐藤有理)
情報科学の技法を人文学のドメインで使わせてもらうだけではなく、人文学の知見を情報科学へも輸出し、人文学と情報科学を車の両輪のように双方向で展開させていく学際研究のあり方を探ります。こうした学際研究は、近年とくに「意味」や「カテゴリ」といった哲学とAI双方の問いを含むテーマにおいて活発に進められています。このあたりの背景・導入を解説します。
第6回
歴史情報学の現状と課題(遠藤みどり)
歴史学におけるデジタルヒューマニティーズはデータベース構築が主流である。現在利用できる様々なデータベースを確認したうえで、それ以外の情報処理を活用した研究の実例なども紹介しながら、歴史学とデジタルヒューマニティーズの関わり方について考える。
第7回
地図と地理空間情報分析(宮澤仁)
地図は正確に地表をあらわしたものか? 実際には地図はさまざまな歪みをもっている。地理情報学のひとつのテーマとして、地図の歪みからわかること、また地図を歪ませることで見えてくることについて、地理空間情報分析の一手法である地図変換を用いた分析例を通じて考える。
第8回
アクティブ・ラーニング・アワー1
人文情報学の各領域における研究例についてリサーチし、その成果と課題についてレポートする。これにより、人文情報学に対する関心と理解をさらに向上させる。
第9回
日本演劇と文化情報工学(埋忠美沙)
現れた先から消えてゆく演劇はとても儚い芸術である。伝統芸能を中心とする演劇の分野において情報工学に関わる調査・研究・分析・創造がいかに可能か、その歴史と現状、そして可能性を講義を通じて理解する。
第10回
可視化と文化情報工学(伊藤貴之)
生活や業務のデータを計算機の画面上に表現する「可視化」はデータサイエンスの中核技術の一つである。この回では計算機を用いた可視化に関する先進事例を紹介するとともに、文化情報工学への応用について議論する。特に音楽の可視化について多くの事例を紹介する。
第11回
システム科学と文化情報工学(吉田裕亮)
システム科学とは、自然科学・医学・社会科学・工学などにおける、さまざまな対象を抽象化することで一つの「システム」としてとらえる学問である。システム科学における研究事例を紹介し、文化情報工学への応用について議論する。
第12回
文化情報工学をサポートする情報システム(Le Hieu Hanh)
文化情報工学は文学作品・芸術作品・地図・歴史などの電子情報を扱う分野である。このような多彩な情報を効果的に処理する情報システムを実現する事例を紹介する。特に、情報を管理するデータベースシステムに関する先進事例について議論する。
第13回
ダンスとHCI(土田修平)
HCI(ヒューマンコンピュータインタラクション)は、人とコンピュータが関わる問題を解決するために仮説と検証を高速に回し、どのようなデザインが望ましいかを研究する分野である。この回では、HCIにおけるダンスを題材とした研究事例を紹介するとともに、文化情報工学でのシステムデザインについて考える。
第14回
アクティブ・ラーニング・アワー2
文化情報工学に関する研究例についてリサーチし、その成果と課題についてレポートする。これにより、文化情報工学に対する関心と理解をさらに向上させる。
第15回
文化情報工学の発展に向けて−まとめ−(土田修平)
これまで学んできた内容を復習したうえで、これからの文化情報工学の発展について考える。

時間外学習
次回の授業範囲について配布資料の内容に基づき予習してください。授業後も復習として配布資料を読み返すことを推奨します。

学生へのメッセージ
「未知のもの」をつくるという点では、工学は芸術や文学(アート)と同じです。文化情報工学は、人文学を基盤に、古今東西の「一つしかないもの」を尊重し、情報技術を用いて、その価値の理解と再創造を行います。データサイエンスの技法(デジタルデータによる論理的な解析)は、この授業の履修に必要ありません。文理の別にかかわらず、人間や社会で生起する事象に対する幅広い知的好奇心、それを「なぜだろう」と自ら解明していく意欲と探究力をもっている人は、ぜひ履修してください。

学生の問い合わせ先
オフィスアワー、連絡先は初回の授業およびMoodleでお伝えします。